iPhoneやiPadの新機種の発売に合わせてシステムソフトウェアがiOS9になりましたが、今回のアップデートではWebブラウザのSafariの拡張機能としてアプリを利用すると広告(コンテンツ)ブロックされる機能が搭載されました。
iOS9からAppleが対応したこの仕組み、まずはこの機能のアプリ(クリスタルとか)をインストールしてSafariのコンテンツブロッカーでオンにすると、iPhoneから訪問したサイトの広告が消える。広告だけじゃなくて、消そうと思えばFacebookやTwitterのボタンとかTwitterの埋め込みとかも消せます。現在のところ、海外向けのアプリが大半で、「Google AdSense」と「Amazon アソシエイト」は消えますが、日本国内のアフィリエイト配信や楽天のアフィリエイトは消えてないのが大半。まあこれは国産のアプリが出てくると実装されるでしょうね。
ユーザーにとっては広告がないことによってSafariの表示速度が速くなるとか煩わしい広告に悩まされないというメリットが考えられますが、これまで広告収入を得ていた多くのWEBサービスにとっては大きな問題をはらんでいます。ここではこの広告ブロックの影響と今後について説明します。
今回の広告ブロックはSafariの拡張機能での対応であり、特にユーザーが使用しなければ今まで通りですが、広告ブロックすることで表示が速くなるなどユーザーがメリットを感じれば徐々に浸透していくことになるでしょう。これが浸透してくればAppleは当然PC版のSafariでも同様の機能を提供するようになり、そうなればパフォーマンスで競争するためにfirefoxなどのサードパーティのWebブラウザでも同様な機能を提供するようになって、徐々に広がってくることになるかもしれません。
ただし、今回の機能提供はあくまでiOSだけなので世界的にみればスマホ全体の10%程度に過ぎないわけで、さらに最初から積極的に機能を使用するユーザーは半分にも満たないでしょうから、一気に急激に影響がでるということはないでしょうが、やはり徐々に広告ブロックを使う人が増えてくることになるだろうと推測されます。
一方、日本ではiOSユーザーは40%を越えているのでその影響はより大きいことが予想されます。
もし、この広告ブロック機能がAndroidやPC版でも提供されるようになるとその影響は甚大でWEBサービスのこれまでのビジネスモデルが成り立たなくなります。
現在多くのWEBサービスが提供されており、その多くが無料で提供されています。もちろん日本経済新聞などの新聞サイトのように有料の購読スタイルのものもありますが、むしろWEBサービスの多くが無料で質の高いコンテンツを提供して閲覧数を極大化して広告収入を増やすというビジネスモデルを採用しています。
しかし、この広告がブラウザでブロックされてしまうということになると広告料収入によるビジネスモデルが成り立たなくなります。従ってWEBサービスは有料コンテンツを購読するようなモデルになるか、もしくはコンテンツを広告主に販売してコンテンツに広告を入れるようなあるいはコンテンツが広告そのものになるようなネイティブ広告が主流になっていくことになるでしょう。
広告ブロックが浸透してくれば、バナー広告のようにユーザーの選択の如何に関わらず自社のメッセージを露出できる機会が限られてきます。またオウンドメディアやソーシャルメディアであってもバナー広告などがブロックされるようになりますから、広告の主流はいわゆるネイティブ広告に移行していくことになります。そうなると、潜在顧客にまずアクセスしてもらうような質の高いコンテンツを準備することが必要になります。
また、一方でWebサービス以外のメディアを活用した広告手法の検討が必要になります。たとえば、スマートフォンであればスマホアプリへの広告などです。PCでもアプリケーションへの広告という形態が広まってくる可能性があります。あるいは、オウンドメディアとしてのアプリケーション配布もより広がりを見せることになるでしょう。
広告は企業のマーケティング戦略の根幹をなすものであり、現在ではWebサイトへの広告は、TVCMに比べて安価でありながらより強力なマーケティングツールになっています。このWebサイトへの広告ブロックが現実の物となりそうな状況を踏まえると、今から広告戦略を見直して新しい広告メディアへの移行や多様化を始めるべきでしょう。
またWebサイトの広告をどんどん増やして、むしろユーザーの利便性を損なってきたWEBサービス側もよりよいユーザー体験を提供しながら利益を得るようなコンテンツへ、そして新しいビジネスモデルへの転換を早急に検討しなければなりません。